ピアノ講師 / ピアニスト
自宅近くでピアノ講師の仕事を増やしたい。そう思って求人情報を探したのがきっかけでした。求人情報のほとんどは都心のピアノ教室や音楽スタジオまでの通勤が必要でしたが、エルピアノスクールは自宅や自宅近くのスタジオでレッスンが可能で、報酬などの条件も納得できた数少ないスクールの1つでした。スクールとの面談では、これまでどんなことを学び経験してきたかだけでなく、八王子教室の担当として今後どうしていきたいかなども話し合いました。書類審査と面接を無事に終えて、2021年より八王子教室を開校しました。開校してわずか半年で、10名もの生徒様が来てくれるようになり、忙しくも充実した毎日を過ごしています。
面談のときに感じた「仕事のしやすそうな環境」という印象は、今も変わっていません。ピアノ講師の仕事は友人に誘われて始めたのがきっかけで、今はエルピアノスクールを含めて3校で教えています。担当する生徒様が20名、30名と増えたタイミングで、会社員を辞めてピアニスト・ピアノ講師として独立することを決断しました。会社員時代もピアノを通じて子供たちと向き合う仕事をしていましたが、そのときよりもずっと生き生きとやりがいを持って仕事できている実感があります。
八王子教室を開校し、講師として生徒様と向き合う中で芽生えた新しい感覚があります。それは、生徒様一人一人が、私自身と向き合ってくれている感覚。誤解を恐れずに言うと、「スクールの誰か」ではなく「八王子教室の私」にピアノを習いに来てくれる感覚です。
例えば多くのピアノ教室では、教え方も教材も生徒様との向き合い方も方針が決まっていて、基本的にはそれに合わせて生徒様を指導します。でも、エルピアノスクールにはそれがありません。生徒様の意見をヒアリングしたり、あるいは日程調整したり。ピアノ技術指導以外に、コミュニケーションの接点をつくりすい実感があります。
「Aさんはこうやって指導していこう」
「Bさんはまずここからやってみよう」
こうやって講師人一人一人が、それぞれの生徒様にとってベストだと考える指導や方針を採用できるのは、スクールからの信頼があるからだと思います。エルピアノスクールは講師一人一人を「音楽やピアノの魅力を伝えられるプロの講師」として、また「一流の知識と技術を有するピアニスト」として、評価し信頼しています。でも、自由には責任が伴います。生徒様の可能性を最大限引き出すために、どうコミュニケーションし、どう指導していくかを考え決断することにもちろんプレッシャーもありますが、ピアノ講師として大切にしたいやりがいそのものであると感じています。
私は4歳から今までずっとクラシックピアノ一筋でした。それでもピアノが好きで続けられたのは、先生に恵まれていたからだと思います。また、社会人になって音楽を通じた交流の幅が広がると「なんて豊かな表現力なんだろう」「なんて楽しそうに演奏するんだろう」と思える人に出会うようになりました。そういう人たちに共通していたのは、幼いころから音を心と身体で楽しむための素養が備わっていたことでした。だから私も、ピアノを弾くための技術に限らず、音楽を楽しんでもらえるよう工夫し、参加すること自体が楽しいと思える場所にしたいと思っています。
別のピアノ教室で「ピアノが嫌だから小学生になったら辞める」と話していた女の子も、私の教室に来てちょっとずつピアノの楽しさに触れて、1曲また1曲と弾けるようになりました。もちろん、今でも楽しそうに通ってくれています。
最初から最後まで通して1曲弾けるようになるために、単調でつまらなかったり、つらくて投げ出したくなるような練習が必要なことは当然あります。私たち講師も同じで、幾度となく心が折れそうになりました。だからこそ、そんなときは私たちに頼って欲しいと思っています。しばらく別の曲を弾いてもいいんです。あるいは、好きな曲を聴いて休憩してもいいんです。ピアノの楽しさを伝えながら、いっしょに伴走できる講師でありたいと思っています。
東京音楽大学に在籍していたころは、学科と実技の試験が毎年課せられていました。しんと静まり返ったステージで緊張に押しつぶされそうになりながら、演奏を完璧に終えることが求められました。試験に向けて必死に学び、技術を磨くことに日々追われていました。今振り返ってみて、充実した学生生活だったことは間違いありませんし、卒業できたことは今後のキャリアを考える上でも大きな糧となりました。でも、もしかしたらその頃の私は、本当の意味でピアノを楽しめていなかったのかもしれません。
その頃と比べると、私とピアノとの関わり方もずいぶん変わりました。屋外の簡易的なステージで、街の喧騒に包まれながら演奏することもあります。誰かにとっての日常の風景に溶け込み、そっと音楽を届ける。そのまま通り過ぎる人もいれば、ふと足を止めて耳を傾けてくれる人もいる。私はそんな舞台での演奏も気に入っています。人前で演奏することが苦手なんじゃなくて、誰かにそっと寄り添う、ピアノで誰かを応援する、そんなスタイルが自分に合ってるんだと思うようになりました。
進学や就職。さまざまな経験を積んで改めて思ったのは「ピアノの先生になりたい」ということでした。いつかは私自身もピアノ教室を主宰したいと思っています。通りから中の様子が伺えるガラス張りのちょっとおしゃれなピアノ教室。レッスンの部屋の隣には、カフェスペース。次のレッスンを待つ親子がここで少しくつろいだり。そっと寄り添えるピアニストとして、これからも生徒様の応援ができたらと思っています。
及川 紗椰佳
Sayaka Oikawa
1996年5月22日生まれ。5歳よりピアノを始める。東京音楽大学付属高等学校ピアノ演奏家コースを経て、東京音楽大学ピアノ演奏家コース卒業。第8回アジア国際音楽コンクール高校生部門第1位。第21回日本クラシック音楽コンクール全国大会第5位。第8回東京ピアノコンクールピアノ協奏曲部門第3位。現在は、ヴァイオリン伴奏やピアノ講師として活動をしている。これまでに、村上隆、米田栄子、村上東子各氏に師事。
講師の仕事をしながら、一流ピアニスト、ギタリストとして広く活躍する講師を紹介します。
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